谷津貝塚出土金属製品(習志野市指定文化財)

更新日:2022年09月29日

ページID : 4801

 谷津貝塚は習志野市の北西部、現在の奏の杜地区周辺に位置し、菊田川低地と海老川低地とに挟まれた台地上に立地します。旧石器時代・古墳時代・奈良時代・平安時代・中世・近世にわたる複合遺跡で、中心は奈良時代・平安時代の大規模集落です。この集落は7世紀末に開発され、9世紀前半に最盛期を迎え、10世紀前半まで継続しました。下総国府(現市川市)と上総国府(現市原市)を結ぶ古代東海道沿いの拠点(きょてん)的集落の一つであり、現在までに竪穴住居跡450軒以上、掘立柱(ほったてばしら)建物跡240棟以上が発見されています。この中には9世紀前半の大型掘立柱建物跡群、墨書土器・打ち欠き土器など大量の供膳具(きょうぜんぐ)土器類が投棄された鍛冶工房が含まれます。
 谷津貝塚では極めて多くの金属製品が出土していますが、以下の資料はその中でも特に稀少性が高く、谷津貝塚の集落の性格、特に律令国家の行政組織との関係などを考える上で重要な資料です。

資料の概要

鈴は、主に祭祀で使われたと考えられます。青銅製2点、金銅製2点、鉄製1点が出土しました。うち3点には内部に鉄製の丸(がん)(鳴子(なるこ))が残存しています。千葉県内の古代の集落遺跡からは、21遺跡29点が出土しています(平成27年4月調べ)が、一遺跡から出土した点数としては、谷津貝塚の5点は最多です。

取っ手の無い青銅製鈴の写真

1 青銅製鈴 鉄製丸残存 鈕を欠く 現存高2.2センチメートル

取っ手のある鉄製鈴の写真

2 鉄製鈴 鉄製丸残存 高3.6センチメートル

取っ手のある金銅製鈴の写真

3 金銅製鈴 鉄製丸残存 高2.4センチメートル

取っ手の無い金銅製鈴の写真

4 金銅製鈴 全面に金の塗布・魚々子文 鈕・丸を欠く 現存高2.3センチメートル

おわんをひっくり返したような形で、頂部に鈕がある青銅製鈴の上部の写真

5. 青銅製鈴 上半部のみ 現存高1.3センチメートル

帯金具

帯金具(おびかなぐ)(「か帯具」)は革製の腰帯につけられた金具です。特に青銅製のものは役人が身に着けた可能性がありますが、出土状況、資料の時期・大きさなどから、金具の付いた帯の状態ではなく、金具だけが個々に持ち込まれたと考えられます。実用品ではなく、威信材(入手・保持することが権威・地位の高さに関わる貴重品)であった可能性が高いと思われます。千葉県内では300点程度出土していると考えられますが、12点出土した谷津貝塚のように、一遺跡で10点以上出土した遺跡は5例ほどしかありません。

ベルトのバックルに似た鉄輪の形をした青銅製の帯金具の写真

6. かこ(「か」は金扁に交、「こ」は具) 青銅製 横4.4センチメートル

上部が弧を描くように丸く、下部が平らで細長い穴のある丸鞆の写真

2. 丸鞆 青銅製 横4.0センチメートル

上部が弧を描くように丸く、下部が平らで細長い穴のある丸鞆裏金の写真

8. 丸鞆裏金 青銅製 横3.2センチメートル

鉄製で表面がでこぼこしており真ん中に穴の開いた丸鞆の写真

9. 丸鞆 鉄製 横2.7センチメートル

鉄製で表面におうとつがあり、真ん中に穴の開いた丸鞆を写した写真

10. 丸鞆 鉄製 横2.7センチメートル

青銅製で四角い形をしており下部に長方形の穴の開いた巡方の写真(横3.1センチメートル)

11. 巡方 青銅製 横3.1センチメートル

青銅製で四角い形をしており下部に長方形の穴の開いた巡方の写真(横2.9センチメートル)

12. 巡方 青銅製 横2.9センチメートル

青銅製で四角い形をしており下部に長方形の穴の開いた巡方裏金の写真(横2センチメートル)

13. 巡方 裏金 青銅製 横2.0センチメートル

正方形の形をした青銅製の左の上下に小さな穴の開いた巡方裏金の写真

14. 巡方 裏金 青銅製 横3.6センチメートル

青銅製の左上の一部が欠け、下部分の左右に小さな穴の開いた巡方裏金の写真

15. 巡方 裏金 青銅製 横2.5センチメートル

長方形の形をし、左上に小さな穴の開いた金銅製の写真

16. 巡方か 裏金か 金銅製 横2.0センチメートル

青銅製の左部分の真ん中に小さな穴の開いた鉈尾の写真

17. 鉈尾 青銅製 横3.8センチメートル

焼印

焼印は、熱して器具や牛馬に印をつけるための道具です。3点2個体が出土しました。鉄製です。これらが器具用なのか牧畜用なのかは断定できませんが、谷津貝塚ではウシの骨が比較的多く出土しているため、牧畜用の焼印だった可能性は十分に考えられます。日本の古代の焼印は40点程度出土していますが、関東甲信地方に限られています。千葉県内では、谷津貝塚以外では2点しか出土していません。

細長い棒状の焼印の写真

18・19. 焼印(「古」または「♀」) 鉄製 推定長約30センチメートル

タツノオトシゴの形をした鉄製の道具の写真

18の印面 「古」または「♀」 縦3.3センチメートル

全長41.3センチメートルの長さの鉄製の焼印写真

20. 焼印「生」 鉄製 全長41.3センチメートル

生の字の形をしている印面の写真

20の印面 「生」 縦4.3センチメートル

海老錠(えびじょう)と呼ばれる錠前(じょうまえ)を解錠するための鍵で、匙(し)とも呼ばれます。千葉県内では古代の海老錠と考えられる例は12点(錠5点、鍵7点)出土しています(平成27年4月調べ)。錠や鍵は、重要な品物を保管していたことを示すので、集落の機能を考える上で重要な資料です。

細長い鉄製の鍵の写真

21. 鍵 鉄製 長8.5センチメートル

握り鋏

古代の握り鋏は千葉県内では10点出土しています。このうち谷津貝塚出土例と同様の形のものは5点ですが、ほぼ完全な形のものは本例だけであり、貴重な資料です。なお、この握り鋏は、現在一般的な握り鋏(いわゆる和鋏)とは刃の位置など構造が異なります(詳しくは実測図のダウンロードファイルをご覧ください)。

一般的なハサミとは異なる形をした握り鋏の写真

22. 握り鋏 鉄製 長13.4センチメートル

千葉県北西部地区文化財発表会で一部を展示します

平成28年1月30日(土曜)に市民会館・大久保公民館で開催する千葉県北西部地区文化財発表会「これって何?−くらしの中の知恵と技−」で、谷津貝塚出土金属製品に関する発表と展示を行います。

第9回 千葉県北西部地区文化財発表会 これって何?~くらしの中の知恵と技~のポスター
第9回 千葉県北西部地区文化財発表会 これって何?~くらしの中の知恵と技~の白黒チラシ

名称

谷津貝塚出土金属製品

員数

22点

種別

有形文化財(考古資料)

時代

奈良時代・平安時代

実測図・寸法等

この記事に関するお問い合わせ先

このページは社会教育課が担当しています。
所在地:〒275-8601 千葉県習志野市鷺沼2丁目1番1号 市庁舎2階
電話:047-453-9382 ファックス:047-453-9384
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