No.106 平成20年5月1日号 ボトルシップと独逸魂

更新日:2022年09月29日

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ボトルシップと独逸(ドイツ)魂

 八千代市郷土歴史研究会から、ドイツ捕虜についての珍しい資料をいただきました。大正時代のドイツ捕虜について記述がある昭和7年(一九三二年)発行の「真善美 (しんぜんび)」という本です。著者の小池民次氏は第一次世界大戦当時、長生郡一宮町で加納子爵の設立した私立女学校の校長を務めており、その縁で習志野収容所を見学したようです。

 小池氏はその本の中で次のように述べています。「欧州大戦中、余は習志野の俘虜 (ふりょ)収容所に行って俘虜(ふりょ)の生活状態を視察した。…余は彼らの手工品を一見したが、その中で瓶詰細工のいかにも見事なものがあった。その由来が教訓にもなるので、相当の手続をしてこれをもらい受けた。その由来とは、本国から届いた妻の手紙に『…やがて平和の日がめぐり来て、御帰国の際はぜひともお土産をご持参願います。但しそのお土産とは東洋の織物にあらず、装飾品にあらず。あなたの手に、あるいは頭の中に得られるものであります。これが御身のため、我が一家のため、また祖国のためになるのであります…』とあるのに励まされて…熟考したところ、幸いにも戦友の一人に瓶詰細工の名人があった。教えよう、教わろうということになり、瓶詰細工を習い覚えて、それを土産とすることに決定した。しかるに本人は極めて不器用で、一日たりとも怠らぬけれども、一年を経てなお細工物の恰好が取れない。二年を経ても進歩が見えぬ。我が警備兵は、最初は彼の不器用を笑ったが…しかるに本人は倦(う)まずたゆまず、笑われようとも罵られようとも、いっこう平気で熱心に習い続けたので、最初に笑った我が警備兵も初めて感心した。三年目にはようやく恰好が取れるまでになった。それからの進歩は目ざましいもので、あっぱれ瓶詰細工師として恥かしからぬ腕前となった。熟練は神に入ると云うのは、このことである。笑われようとも、罵られようとも我れ関せずで、四年が六年でも十年でも志を遂げざれば止まぬという独逸魂は万事に行き渡っているので、独逸俘虜(ふりょ)の生活状態が、この瓶詰細工で代表されているように感じた…」

帆船の模型が瓶の中に入っている工芸作品の写真

ボトルシップの内部

 瓶詰細工とはもちろん、ボトルシップのことです。瓶の中に帆船の模型を組み上げるボトルシップに小池氏はとことんやり抜くドイツ魂を感じたのでしょう。

 小池氏は遠州浜松藩士の家に生まれ、明治維新の際、上総国鶴舞に移り藩校を終え、教員となってからも「独学にてよく英語を学び、ドイツ語を修めた」そうです。昭和7年にこの本を出し、同11年79歳で亡くなっています。

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